平成28年11月9日(水)~11月11日(金)の日程で、熊本地震災害現場の視察を行いました。
参加メンバーは、竹内章富山大学名誉教授を団長にして20名で、今回はその調査団の中に、富山県立大学・大野宏之客員教授(前・国土交通省砂防部長)と学生2名にも参加していただきました。
平成28年4月14日21時26分、熊本県熊本地方を震央とするマグニチュード6.5の地震(前震)が発生、さらに、4月16日1時25分には、マグニチュード7.3の地震(本震)が発生し、熊本県西原村と益城町で震度7を観測し、その後も余震が続いています。
これら一連の地震により、土石流等57件、地すべり10件、がけ崩れ123件、死者15名の土砂災害が発生しました。
現地視察は、テレビニュース等で報道された阿蘇大橋付近の大規模崩壊地、火の鳥温泉地区の地すべり、高野台地区の地すべりと震央の益城町の4箇所を調査しました。
阿蘇大橋付近の大規模崩壊地は、斜面長約700m、幅約200m、深度約20m、崩壊土量約50万㎥の崩壊で、この大規模な崩壊によりJR豊肥本線、国道57号を完全に埋没させ、阿蘇大橋も消失しました。
この被災箇所は、崩壊規模が大きく、周辺斜面にも多くの亀裂があるため、崩壊の拡大の恐れのある不安定岩盤を調査して取り除く対策を実施され、その施工は、余震などによる新たな土砂崩壊の恐れがあることから、遠方の安全な場所より操作が可能な無人化機械により施工していました。現在、中段に土止盛土工2段が完了し、上部周辺の不安定土塊を落としていました。
今後の災害復旧工事は、上部を「ラウンディング」(不安定土砂の除去)した上で、斜面の法面工と緑化工をする計画でした。
人家、家屋の被害が生じたのは、主に谷頭からの崩壊(Aブロック)とその東側の尾根末端付近の崩壊(Bブロック)でした。
Aブロックは、崩壊頭部から末端まで約350m、崩壊幅は上部約100m、中流部約150m、下部約150m程度で、崩壊土砂量は約38、000㎥の崩壊で、この崩壊により、宿泊施設4棟が全壊で宿泊客2名が亡くなられました。
Bブロックは、崩壊頭部から末端まで約100mで、崩壊土砂量は約18、000㎥の崩壊で、この崩壊により、人家2戸が全壊、2戸が一部損壊でした。
A、Bブロックともに滑落崖背後に段差を伴う亀裂が発生している状況でした。
両ブロックの対策は、災害関連緊急地すべり事業で実施することになっており、現在具体的な対策については調査中でした。
中央頂部に京都大学火山研究所がある円丘状の火口丘の斜面で、本震時に幅約100m、長さ約260m、深さ約10m程度の地すべり移動があり、移動土塊は流動性が高く、一部は別荘地に流れ込んで、全半壊11戸、死者5名の被害が生じました。
火山研究所がある頂部にも亀裂が多く見られ、火山研究所の建物も被災している状況でした。
現在具体的な対策については調査中でした。
震央部の益城町の国道443号と県道28号が交差する周辺では大きな被害が発生しており、国道に沿って流れる秋津川の支流側の土手が大きく崩壊し、やや低い位置にある住宅が軒並み崩壊していました。
益城町役場は、構造物の本体部分は大きな損傷を受けているようには見えませんでしたが、これは耐震補強のお陰と考えられます。しかし、建物の周りは非常に大きな地盤変状が見られました。
また、農地のところでは断層が見られ、農地の段差、河川護岸の変状などの被害が生じていました。
今回の災害地視察では、地震災害の恐ろしさと、災害に備えるソフト・ハード面での防災対策の重要性について身を持って感じました。
この視察で得た貴重な体験については、会員はもとより、広く県民に伝える必要性が重要であると考えています。
このため、視察の報告については、2017年2月に開催予定の「斜面防災対策技術講演会」で発表することにしています。講演会の日程については、協会支部のホームページで案内いたします ので、皆様の参加をお待ちしています。